風力発電建設計画への私たちの主張

宮城県知事村井嘉浩 様

川崎町長小山修作 様

 

私たちの主張

過去~現在~未来と、この豊かな自然とくらしを引き継いでいくために

 

<関西電力による風力発電建設計画について>

 

令和4年6月10日

グリーンスパの住環境を守る会

 

今、私たちの住む地域のすぐ近くに、風力発電所の建設が計画されています。

 奥羽山脈の一端を担う蔵王連峰に、関西電力によって風車が23基設置されようとしています。

 現時点で、宮城県内で計画されている風力発電の規模としては最大と思われます。

 再生可能エネルギーの必要性が叫ばれる時代ですが、その前に考えるべきことがあります。

 原子力発電も、当初はクリーンで安全なエネルギーと言われ、確かに大きなエネルギーを生むものでした。しかし東北に住む私たちだからこそ、その結果が農作物や天然のきのこ、山菜などの出荷規制や風評被害、ひいてはイノシシ等の害獣駆除とそれらの処分について苦渋を舐めることになった事実を知っているはずです。

 「原子力ほど危険ではなさそう」だからすぐ着手して良いのでしょうか。ソーラーパネルは何の問題もありませんでしたか?

 住民への説明が充分になされず計画が進められる前に、自分ごととして考えてみませんか。

 

■発電用の風車を実際に見たことがありますか? 

 ~仙台観音像の約2倍の高さ~

  遠くから眺めるだけなら、白くクルクル回る風車は特別なものではないかもしれません。

 しかし、その大きさは143~180メートル。とても巨大なものであり、数キロまで近づけば相当の圧迫感です。

 

■風車を立てるだけ? 

 ~建設、保守、交換と20年50年先まで企業任せで本当に大丈夫?~

  巨大な風車の資材を、大型車両をつかって山奥まで運び、大型のクレーンを使って建設します。

 そのための道も切り開かなければいけません。配慮書には「できる限り既存の林道を使用する」と記載されていますが、計画では23基。それぞれに、建設だけではなく保守のための道路が必要です。現場は森林を切り開き、作業用のスペースを確保する必要があります。

  さらに、一度建てたらずっと使えるわけではありません。20年ほどで建て替える必要があります。50年経てば基礎のコンクリートも作り直しです。

  建設・運用する企業に、その経営状態によらず維持管理を行い、また撤去を行ってもらう必要があります。そして何らかの理由で撤去に至った時、元の環境に戻るのでしょうか。企業任せにして大丈夫なのか。私達自身が考える必要があります。

 

■なぜこの土地に? 

 ~この地域は宮城県の「保護優先・地形障害エリア」指定区域です~

  今回の計画がある川崎町南西部、今宿から青根にいたる地域は、「風況が良好と考えられる」のだそうです。配慮書によれば「風速が概ね6.5m/s」となっています。確かに蔵王おろしと呼ばれる風が、猛烈に吹くこともあります。

  反面、冬場の暴風、かなりの量の積雪がある場所であり、着雪や凍結に耐えられるのか、何よりもメンテナンスや緊急の要で冬場でも立ち入ることができるのか。

  また、宮城県は風力発電の導入を否定しているわけではなく「風力発電導入に係る県全域ゾーニングマップ」を策定していますが、マップによれば川崎町の風力発電導入可能性エリアとしては本砂金を挙げています。むしろ今回計画されている所は「保護優先・地形障害エリア」とされています。

 

■景観 

 ~完成してから「やっぱりやめてくれ!」では遅いのです~

  景観は人によって受ける印象はさまざまであり、一概に良し悪しを語れるものではないかもしれません。しかし、国定公園であり、霊峰である蔵王の山々の下に風車が立ち並ぶことになります。

  実際にどの程度に見えるのか、現段階では予想がつきません。配慮書では風車の大きさを示す図はありますが、景観としての公式なイメージ図があるわけでもなく、私たちは出来上がってから初めてその様子を目にすることになります。完成してから「やっぱりやめてくれ」という訳にも行かないでしょう。

  宮城県はもちろん、県境を接する山形県、そして蔵王を訪れる方々にとっての問題ともいえます。

 

■反対とか賛成とか言っても、大企業に聞き入れてもらえないのでは?

 ~川崎町の先人たちの思い、そして、未来に何を残すかの問題です~

  川崎町には、2~3世代遡れば人造湖である釜房ダムの建設にあたって立ち退きを余儀なくされ、町内で移転しただけでなく町外へ転出した人々がいるという歴史があります。この時も反対運動を行ったものの結果は見ての通りです。

  世の中には、公共の利益のために「やむを得ず」一般市民が不利益を被り犠牲となる事があります。しかし、今回の風力発電について考え、意思表示を行わずにいてよいのでしょうか。

  これは、未来に何を残すかの問題です。川崎町は自然環境が豊かな所ですが、動植物を含めた自然環境は努力なしに守れるものではなく、今ある環境は過去に生きた人々が守り、選び、残してくれたものです。

 釜房ダムは、その建設によって失われた人々の生活と引き換えに、野鳥が集う釜房湖が残りました。

  風力発電の建設によって、私たちは未来に何を残すのかを考えなければいけません。

 

■今回の計画についての「計画段階環境配慮書」って何? どこで見られるの?

  配慮書は、関西電力が、大阪にあるKANSOテクノスという企業に委託して作成したものであり、開発を行うにあたって配慮書を作成することは法令で定められています。

  決められた項目について調査した結果です。しかし、様々な地域の特性を列挙し環境に対し影響があることを記載しつつも、対策やそれに対する複数案については「具体的な配置計画が未定である」ことを理由に、具体性のある影響の回避・低減の方法については、今後計画を進めながら検討する、と後回しにしています。

 またこの配慮書の冒頭に目的を以下のように記載しています。

  「本事業は、風況が良好と考えている宮城県川崎町において陸上風力発電事業を計画及び実施し、再生可能エネルギーである風力による電気を供給することにより、地球温暖化防止、わが国のエネルギー自給率の向上への寄与、風力発電を通じた地域の活性化への貢献および地域との共存を目指して取り組むものである」と。

 地域の活性化、地域との共存とは何でしょうか?工事や工事に関係する人の往来による経済効果でしょうか?36ヶ月の工期が過ぎて完成した後は?川崎町で作られた電気を関西電力が売電し、どこで使われる事になるのでしょうか?電力が不足している東電?それで本当に私たちの地域も活性化するのでしょうか?地域と共存という耳障りが良い言葉を使っていますが、環境への影響や対策を棚上げにしたまま事を進めるのは共存なのでしょうか。

  さらに、この配慮書の公表方法も法令で定められており、川崎町役場で縦覧できますが、その場で読むだけです。持ち帰ることもコピーもできません。インターネット上では関西電力のウェブサイトに掲載されていますが、ダウンロードも印刷もできません。内容には細かい表や地図も含まれますが、パソコンで拡大しながら見ても非常に読みづらく、スマートホンではなおさらです。

  この方法で意見を求めよと言われても、どれだけの人が理解し同意し意見できるでしょうか。まして高齢者が多い川崎町において、いったい何人がこの配慮書に目を通し意見できるでしょうか?

 

■筆者所感

  風力発電が建設される計画そのものがまだまだ伝わっていません。出回っている話はテレビのニュースのみで、ニュースを見逃せばほぼ知る機会がありません。他の地域の開発も同時進行しているので混同もあるかと思います。

  青根の住民の意見書が少ないと聞き及びます。高齢者が圧倒的に多く人間関係も密接な川崎町において、情報を自ら求め、かつ積極的に個人の意見を公開すること自体ハードルが高いのです。

  本文にも記載しましたが、川崎町の一部住民は釜房ダムの建設で立ち退きを余儀なくされ、町内で移転しただけでなく町外へ転出した人々がいるという歴史があります。その経験からか、今回のような大企業による開発や国策とも言える事業において「住民が反対したこところでどうにもならない」という厭世観を感じている方も少なくないと思います。

  地域住民は「自然はあるのが当然、自然いっぱい過ぎてその有難みを感じられない」状態です。町からちょっと離れた山奥の開発は、実際に風力発電の風車を見たことが無い人がほとんどでイメージできないと思います。正確な予想図を関西電力の方こそ提示すべきではないでしょうか。

  今回の計画は、最終的には経産省が決定権を持っているのでしょうか?であるなら意見できるのは宮城県知事ですか?

 そして、いつも「先人たちの努力を引き継ぐ」が川崎町町長の談です。県知事へ先人たちの思いと今いる私たち住民の声を伝えてください。よろしくお願いします。

 

以上